東京SP研究会トップページ > コラム:日下隼人 > No.123
医療倫理に関する文献を読んでいると、その結論として「合意形成が必要」というような言葉に出会うことが時々あります。この「合意」というのは意見が合うということでしょうが(あたりまえか)、どのレベルの意見なのでしょうか。なんとなく「・・・・するべきである」「・・・・する方が良い」というところでみんなの意見が合うことを指している印象があるのですが、それだけが合意ではないと思います。
「どんなに話し合っても、この件については意見が合わないですね」「一つの結論にまとめない方が良さそうですね(まとめるべきではありませんね)」「一つの結論はないまま、頑張るしかありませんね」というところで意見が合うのも合意です。こうした合意は、インフォームド・コンセントに限らず、医療者にはなかなか受け入れられないもののようです。このような合意の上で、私たちにできる範囲で援助するということはもっと考えにくそうです。
でも、本当はこのような「合意」のところで医療をしていることの方が多いのではないでしょうか。そのことに私たち無自覚なのは、患者さんが引き下がって「同意」してくれていることに私たちが気づかないからだと思います。「説得コミュニケーション」というようなことが必要な場面は確かにあるのですが、それでもこの言葉に私はいまだになじめていません。