東京SP研究会
コラム:日下隼人

日下隼人プロフィール

No.37

“はじめて見た” で良いのかな

日下隼人    外来診察のとき、私は診察室の扉を開け、患者さんが入っていらっしゃるまで立ってお待ちして、着座をお勧めしてから自分も座るようにしている、ということは以前にも書きました。それが、自宅にお客様がいらしたときの普通の迎え方だからだということも。暮らしの中にある、あたりまえのマナーが医療という場でも生かされれば、今日のギスギスした関係もずいぶん変わるのではないかとも思っています。
   でも、私の外来を見学に来る多くの医学生が「OSCEの通りにしている医師をはじめて見た」と言うのです。大学の外来でほとんどの医師は、椅子に座ったまま患者さんを呼び入れているようなのです。これでは、学生は、講義されていること・試験で問われることは現実とは無縁のことなのだと思うことになります。後進は先達の姿からしか学びません。講義でされていることは実際にはしなくて良いことなのだ、建前と本音は違うのだというようなことを学ばせてしまうとしたら、態度教育としては最悪のものだということになります。OSCEで、医療面接の評価者をしたことのある医師くらいはOSCE通りにしてくれないと、と思うのですが。
   もっとも、最近のご都合主義的・場当たり的な「初期臨床研修制度の改変」と比べれば、まだまだかわいいものなのかもしれないとも思いますので、「最悪の」という形容詞は正しくないかもしれません。このようなことをしている国に翻弄されているうちに若い医師たちの心が蝕まれていくということを、いい年をした「大人たち」は気づかないのでしょうか。


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