東京SP研究会トップページ > コラム:日下隼人 > No.98
「お客様は神様です」と言った歌手がいました。でも、患者さんは「王様」だと思うほうがよいのではないでしょうか。神様は間違いを犯しませんが、王様はしょっちゅう間違います。わがままな王様も、気まぐれな王様もいますし、暴君もいます。王様なのですから理不尽なことを臣下に求めることも少なくありませんし、忠告しても聞き入れてくれないこともあります。
だからといって、革命を起こして王様を倒しても、王様は次々と生まれてくるので、無限の闘いに陥るしかなくなります。そっぽを向いても王様はいなくなりませんし、悪口を言っても楽になるわけでもありません。王様をなだめたり、時には「殿、ご乱心」とばかりやんわりと諌めたりして、ご本人には気持ちよくなってもらい、外から見れば名君になってもらえるようになんとか仕向けていくのが、有能な臣下です。医療を含めてサービス業を担う人とは、そのような「技」を駆使することを楽しめる人だと思います。
Guest is always rightという言葉もサービス業の世界で語られるそうです。医療の現場での現実はGuest is rightではないことも少なくないのかもしれませんが、とにかく一度はそう考えるところからどのようなサポートが提供できるか努力してみること。相手が間違っているときも、You are wrongと言って頭から否定してしまうのでなく、相手の気持ちを傷つけないように、気づかれないようにさりげなくrightなほうに一緒に歩いていく。そんな姿勢をこの言葉から感じ取ることもできそうです。
(2012.1)