東京SP研究会
コラム:佐伯晴子

佐伯晴子プロフィール

No.1

はじめまして。

佐伯晴子 はじめまして。私はSPつまり模擬患者の要請と利用に関する活動を行っている者です。具体的には、医療の専門家が患者さんと相互理解をはかるためにはコミュニケーションをどうとればよいか、というテーマで医学部などの医療面接の実習に協力しています。
 また、最近話題のOSCEの医療面接部門での協力は、年間30件を超えるまでになりました。医療面接に対する関心は最近特に高まりつつあるようです。
 「問診」ではなく、「医療面接」と名称が変えられている背景にも、平成七年版の厚生白書に「医療は、人が生まれる時から死ぬ時まで、国民一人ひとりに密接に関連するサービスとなっております」と書かれる社会の変化があるようです。
 さて、医療面接の目的としては、診断や治療のための正確な情報収集と医師(医療者)ー患者関係の構築が、大きな二本柱としてあげられています。そこで本書では、患者の側から面接を受けていて実際にどう感じているのか、少しお話しすることで、医師ー患者関係の構築という面で参考にしていただければと考えています。
ところで、医療者にとっては、面接でいかに情報を引き出すか、聞き出すか、心を開かせるか、と主語は当然、医療者になります。一方、今日という日にこの病院を選び、ようやく順番が回ってきた患者さんにとっては、面接では何が重要になるのでしょうか。自分にとって最適な治療をしてもらいたい、と誰もが希望しています。「最適」の具体的な中身には、確かな医療技術と同時に、自分を支えてくれるという信頼が含まれているのです。信頼という目に見えないものは評価が困難ですが、初診の面接で患者さんが「次回もこの医師にかかりたい」と思うかどうかが、最初の信頼の目安になると思われます。そして、その最初の信頼の鍵を握っているのが、基本的態度とコミュニケーション能力であることが、実習やOSCEでの模擬患者からの感想や評価からわかってきました。
 言葉づかい自体はていねいで、患者さんを一人の人間として尊重し、落ち着いた態度で、患者さんの目を見ながら、話に耳を傾けることのできる医療者であるにもかかわらず、患者さんにとってみれば、あまりコミュニケーションがうまくいった気がしないことがあります。
 本書では、模擬患者が参加して行われた実際の実習で出てきた問題などをとりあげながら、求められる患者ー医療者関係について考えていきたいと思います。

[佐伯晴子]『あなたの患者になりたい』医学書院刊より

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