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2002年 日本医学教育学会 座長記録1
「医学教育者とSPの語らいの夕べ」
「医学教育者とSPの語らいの夕べ」 コーディネータ:佐伯晴子(東京SP研究会)
高木 康(昭和大学医学部) 臨床実習開始前の医療面接実習と共用試験や臨床実習終了後のOSCEなどで医療面接におけるSPの需要が急増している。共用試験企画の目的は医療に対する国民の信頼回復という。信頼を意識した医療面接が行えるようになるためにSPとして協力しているつもりであるが、医学教育者とSPの間でコミュニケーションが十分あるとは必ずしも言えないのが現状である。医学教育者はSPあるいは医療面接教育に何を期待しているのか、SPは医学教育者あるいは教育全体に何を疑問と感じているのか、率直で建設的な対話をすることが当セッションのねらいであった。 医学教育者28名、SP12名、学生1名が参加し活発な意見交換が行われた。医学教育者側からのSPに対する期待として、従来の医学教育では欠けていた患者側の視点が得られることがあげられた。その背景には「患者中心の医療」など世の中の変化があり、医師が価値観の変容を迫られるため、医療面接教育を喜んでやろうとしている大学は実は少ないだろうという意見もあった。一方SPからは、学外教育力としてOSCEなどの評価を何らかのかたちで活用してほしい、SPの標準化が求められSPの欠点を批判されるが、どうすればいいか一緒に考えてくれる医学教育者がいない、大学のことなら大学で考えてほしいとの声があがった。 また最近の傾向としてOSCEという試験対策のための実習や、効率的な3分、5分診療を行うための訓練のようなOSCEがみられる「仮面ドクター」を作っているのではないか、患者中心とはズレてきている、評価者が評価できていないなどの厳しい指摘があり、現状のOSCEの欠点を考えた上で、評価者のレベルアップを図る必要が感じられた。医療面接はひとつの異文化の出会いである。異なる価値観の相手を認めコミュニケーションをとる態度と技能の修得は、当の相手の感想や評価を聞くことから始まる。医学教育での教育者とSPの出会いにも同じことが言えるのではないか。医療面接教育の充実と、信頼に基づく医療づくりには、両者の対話が今後も欠かせないと感じた。 |